Scilabで学ぶフィードバック制御入門
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制御の安定性:安定性の判別


ナイキスト線図をからその系の安定性を判別します。

判別方法−1

一巡伝達関数の根の中で、複素平面の右半平面にある数を M とします。
このときのナイキスト線図で、(-1+j0) の周りを反時計方向に回る回数を調べ、その回数をNとします。
M=N が成立すれば、このフィードバック系は安定します。

判別方法−1 具体例



図の系で


とします。

この時のナイキスト線図の描画と、一巡伝達関数(G(s)・H(s))の根を求めます。

コンソール画面
-->s=%s;                    //←多項式の変数 s を定義
-->G=(s+2)^2/((s+4)*(s^2-2*s+3));  //←一巡伝達関数G(s)を定義
-->H=10;                   //←一H(s)を定義
-->GH=G*H;                 //←一巡伝達関数G(s)H(s)を定義
-->sys=syslin('c',GH);     //←連続時間線形システムへ一巡伝達関数G(s)H(s)を登録
-->nyquist(sys,-1000,1000) //←ナイキスト線図の描画
-->roots(denom(GH))        //rootsは多項式の根を求める関数 特性根の算出
 ans  =
    1. + 1.4142136i  
    1. - 1.4142136i  
  - 4.         



本例の一巡伝達関数の特性方程式は (s+4)*(s^2-2*s+3) です。
その根は3個あり、その中で右半平面に解は2個あります。
  • 1. + 1.4142136i
  • 1. - 1.4142136i
ナイキスト線図で、(-1+j0)の周りを反時計方向に回る回数を調べます。
ナイキスト線図の(a)点を出発し(b)点に到達したときに (-1,j0) 点を1回反時計回りに回っています。
同様に、(b)点から(c)点に達したときにさらに1回、合計2回反時計回りに回っています。
つまりM=2、N=2となり、この系は安定していると判別出来ます。


とした場合は、どうでしょうか?
のナイキスト線図>


グラフから一目瞭然なように、(-1,j0) の周りは囲まれていません。
一巡伝達関数の根は、H(s) = 1 でも同じなのでM=2、N=0 となり、この系は不安定と言えます。

判別方法−2

一巡伝達関数は、右半平面に解を持たないことが多くあります。
この場合判別法が簡単になり、ナイキスト線が (-1,j0) の右側を通れば安定しています。
逆に、左側を通れば不安定になります。

判別方法−2 具体例


一巡伝達関数が


で与えられるときのナイキスト線図を見ます。
コンソール画面
-->s=%s;                    //←多項式の変数 s を定義
-->G=1/(s^2+s+1);           //← 一巡伝達関数を定義
-->sys=syslin('c',G);       //←連続時間線形システムへ一巡伝達関数Gを登録
-->nyquist(sys,-1000,1000)  //←ナイキスト線図の描画
-->roots(denom(G))          //一巡伝達関数の特性根を求める
 ans  =
  - 0.5 + 0.8660254i  
  - 0.5 - 0.8660254i  

<実行結果>


巡伝達関数の根に右半平面の値はありません。
かつ、ナイキスト線が(-1,j0)の右を通っているので、この系は安定しています。