Scilabで学ぶフィードバック制御入門
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制御の安定性:判別の仕組み


ナイキスト線図によって安定性が判別出来る理屈を解説します。

特性根


上図の閉ループ伝達関数は、 です。

フィードバック系の安定性を判別するためには、伝達関数の特性根の位置が重要なのは既に述べてきました。
(特性根とは の解)

G(s)、H(s) は分子と分母で多項式になっています。
この G(s)、H(s) を

と置きます。

すると次式のように書き換えられます。
…(1)

一巡伝達関数は、

でした。

したがって、(1)式の分母は、一巡伝達関数の分母と一致しています。

また、分子は次のように閉ループ伝達関数の特性方程式を導き出せます。


すなわち、(1)式を因数分解して
…(2)
とした場合
=閉ループ伝達関数の特性根
=一巡伝達関数の特性根
になります。

1+G(s)H(s)の回転角

(2)式で、sは複素数です。
s平面上で(2)式の偏角を考えたとき、

となります。

∠(s-q1)に着目します。
q1が閉ループの内か外かで、偏角に違いが出ます。

s平面上任意の閉曲線に沿って s を時計回りに移動させます。
q1が閉ループ内 sが時計回りに1周すればq1の偏角は-2π変化する
q1が閉ループ外 sが時計回りに1周してもq1の偏角は変化しない

ナイキスト経路

s のたどる閉曲線として下図を考えます。


半径 R→j∞ とすれば、この閉曲線は、特性方程式の右半平面の根を全て囲むことになります。
このような経路をナイキスト経路と呼びます。

前述のように、閉曲線内の qi、pi だけが∠{1+G(s)H(s)} の偏移(回転数)に関係します。

この事実をもとに

の変位(回転数)を考えます。

qi、pi は実部がプラスのときに不安定要素になります。
この不安定要素が1個存在するごとに、1回転発生します。
また、qi、piは回転方向が逆で、qは時計回り、pは反時計回りに回転します。

したがって、
 qiの実部がプラスの数=Q
 piの実部がプラスの数=P
とすると、1+G(s)H(s)は、時計回りに Q-P回転することになります。

つまり、s がナイキスト経路を一周したとき、1+G(s)H(s)は反時計方向にP-Q回転します。

結論

1+G(s)H(s) が原点を中心に回転するならば、G(s)H(s)は -1 を中心に回転することになります。
前述のように、回転数は P-Q で得られます。
すなわち、ナイキスト線図が -1 を中心に反時計回りに回転する数をZとすると
 Z=P-Q
になります。

Z=Pであれば、Q=0 となりこのシステムは安定と判別出来ます。
(Qは閉ループ伝達関数の特性根の数)